不動産鑑定評価における価格時点について
価格時点とは?
不動産の価格は社会経済情勢や周辺地域の状況、不動産に関連する法令上の制限など多数の要因によって形成されています。そして、これらの要因は常に一定ではなく流動的で時の経過により変動するものであるため、不動産の価格はその判定の基準となった日においてのみ妥当するものです。したがって不動産の鑑定評価を行うにあたっては、不動産の価格の判定の基準日を確定することが必要不可欠であり、この日を「価格時点」といいます。
特に経済情勢が急速に変化している時期や周辺で新たな開発やインフラ整備が行われるなど不動産を取り巻く環境に大きな変化があるときには、価格時点の僅かな相違によって不動産価格が大きく異なる場合もあるので注意が必要です。価格時点が違えば鑑定評価額も違ってくるのです。
鑑定評価の依頼目的によっては、過去時点や将来時点の評価が必要となる場合もあります。過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な資料の収集が可能な場合に限り行うことができます。将来時点の鑑定評価は、対象不動産の確定や価格形成要因の把握、分析など、すべて想定し又は予測することとなり、また収集する資料についても鑑定評価を行う時点までのものに限られ不確実となります。したがって特に必要がある場合において、鑑定評価上妥当性を欠くことがないと認められる場合を除いては、原則としてこのような鑑定評価は行うべきではないとされています。
不動産の鑑定評価を行うにあたっては、今回ご紹介した「価格時点」のほかにもあらかじめ評価作業前に決めておかなければ評価ができないという項目があります。例えば、どの不動産の何を評価するのかといった「対象不動産の確定」やその不動産をどのような前提で評価するのかといった「鑑定評価の条件」などがあります。また、鑑定評価を必要とする「依頼目的」も重要となります。
価格時点をはじめとしたこれらの項目如何によっては、鑑定評価額は大きく異なりますので、鑑定評価書を利用する際にはこれらの項目が依頼目的に合致したものとなっているか確認することが重要です。不明な点があれば積極的に不動産鑑定士に説明を求めてみるとよいでしょう。