実家の将来について考える
実家の土地や建物を将来どうするか、考えたことはありますか?
相続が発生したときの住まいの主な活用方法として、居住・賃貸・売却が考えられます。また建物については、そのまま使用、リフォーム、解体が考えられます。
○居住
相続発生時、持ち家がなく賃貸住宅に住んでいるのであれば、実家に住むということも考えられるでしょう。しかし、現在の住まいから遠かったり、利便性が劣るところであったりすると、あまり現実的ではなく、一度実家を出てしまった方には難しいかもしれません。
○賃貸
実家に住むことはできないけど手放したくないという方には、貸すという方法もあります。建物は長期間放置しておくと劣化してしまいます。誰かが住み続けると建物を良好な状態で長く使うことができるでしょう。家賃収入を得ることもできます。
○売却
今後誰も住む予定がないというのであれば、売却することが考えられます。諸経費や税金などはかかりますが、まとまった金額を手にすることができ、相続人が複数いる場合、売却代金を持ち分に応じて分けることができます。
相続財産のうち不動産は大きな割合を占めています。ここでは、近年増加している空き家についてみていきたいと思います。
相続人全員に持ち家があって誰も実家を引き継ぐことができない。
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しかし処分を決断できず、しばらくの期間はそのままにしてしまう (空き家状態になる) 。
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年月が経つうちに相続人が増えてしまう等、話し合いが難しくなる。
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老朽化が進み、資産価値も下がっていく。
○空き家にしておくと…
放置しておくと家屋が傷んでしまったり、庭が荒れる等劣化が進んでしまう為、清掃、換気、庭木の剪定、除草など、定期的なお手入れが必要となります。また、固定資産税の負担も続きます。お手入れを怠ると、家屋の倒壊などの危険な状態となったり、衛生面や景観の悪化などにより、近隣の住民に迷惑をかけることになってしまいます。そのような放置された状態が続くと、自治体から「特定空家等」に指定されてしまいます。
※特定空家等とは?
(ィ)そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(ロ)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(ハ)適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(ニ)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
※(ィ)又は(ロ)については、現に著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態の空家等のみならず、将来著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態になることが予見される空家等も含めて、幅広く対象と判断することのできるものであること。
(国土交通省「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン))
「特定空家等」に指定されてしまうと、助言・指導→勧告→命令を受けることになり、土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなって税金の負担が増えるなど、所有者にとっても大きなデメリットがあります。
さらに、自治体からの命令に応じないと、最大50万円以下の罰金が科される場合があります。
※税金の負担が増える?
固定資産税の住宅用地特例では、家が建っている土地の場合、敷地面積200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されます。しかし、特定空家等に指定されると軽減措置が適用されなくなります。
・利便性など立地条件がよい。
・維持、管理が行き届いている。
・相続人の間で意見が一致している→全員に売却の意思がある。
などの場合は、売却しやすいでしょう。建物の老朽化が激しいなど売却が難しい場合、
建物を解体し、更地にして売却することも考えられます(空き家の解体費用については、補助金、助成金制度がある自治体もあります)。
※空き家の発生を抑制するための特例措置
被相続人が居住していた家屋及びその敷地等を相続した相続人が、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その家屋(その敷地等を含む。)又は家屋取壊し後の土地を譲渡した場合、一定要件を満たせば、その家屋又はその土地等の譲渡所得から3,000万円までが控除されます。令和5年(2023年)12月31日までの譲渡が対象です。
主な適用条件
- 相続開始の直前(老人ホーム等に入所の場合は入所の直前)まで被相続人の居住の用に供されていて、かつ被相続人以外の居住者がいなかったこと。
- 相続開始から譲渡の時までに事業の用、貸付けの用、又は居住の用に供されていないこと。
- 耐震基準を満たした家屋又は取壊しをした後の土地を譲渡していること。
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること。
- 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したこと。
- 譲渡価格が1億円以下であること。
(国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除))
(政府広報オンライン「年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは?」)
また、売却や賃貸が難しく、相続した土地が不要な場合、一定の負担金を納めて、国に所有権を引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が創設され、令和5年4月より施行されます (更地である、隣人と境界等で争っていないなど一定の条件があります) 。
法務省:相続土地国庫帰属制度について (moj.go.jp)
○どうしたらよいのか悩んだときは…
各自治体で空き家の相談窓口を設置し、解決に向けた具体的な手法の提案や各種専門家の紹介などを行っています。まずは相談してみましょう。
埼玉県では主に市町村が主体となって「空き家バンク」を運営しています。「空き家バンク」は、空き家を売りたい・貸したい人と、空き家を買いたい・借りたい人をつなぐ制度で、物件情報を登録して希望者に情報を提供することができます。
○まとめ
年末年始は親族が実家に集まる方も多いでしょう。この機会に将来実家をどうするか話し合う場を作ってみてはいかがでしょうか。
不動産鑑定士は不動産の専門家です。実際に売れる価格や賃料の評価・調査、土地の有効活用などぜひご相談ください。