天空率 ~美観と収益性の観点から~
天空率 ~美観と収益性の観点から~
今回は「天空率」がテーマです。
以前は、敷地の中で幅広に建築され、かつ、建物上部の角が斜めになった建築物が多く見られたのに対し、近年では、幅が細く高い建築物で、敷地内での空地も多くなってきているシュッとした建築物が多くなってきており、天空率を採用した建築物の美観が優れてきているな、といった印象を受ける建築物が多いと感じたため、あえて振り返ってテーマとしてみました。
建物または建物を含む鑑定評価や、評価対象土地の価格形成要因について、より詳細な調査の参考として、役所の建築確認関係のセクションで、当該建物の建築計画が記載されている建築計画概要書の写しを申請・取得するケースは多く、鑑定評価に当たって非常に参考になることは評価に携わっている方であればよくご存じのことと思います。
そして、ここ20年くらい、この建築計画概要書に天空率適用の旨の記載が多く見受けられるようになってきました。
それでは、天空率とはあらためて何でしたでしょうか。
「天空」と聞くと…w
ものの本などを見ると、天空率とは、魚眼レンズで空を見上げた時に、円の面積に対してどれだけ空が見えるかの割合を示したもので、天空率が大きければ大きいほど空が多く見えます、といった説明をよく見ます。
(イメージ図)
また、天空率の適用により、3つの斜線制限が緩和されます、といった説明もお見受けします。
・道路斜線制限
・隣地斜線制限
・北側斜線制限
さらに、日影規制や高度地区、絶対高さ制限などは緩和されず遵守される必要があります、といった説明もお見受けします。
天空率とは、採光・通風等の環境性能がどの程度確保されているかを判断する指標で、2003年に施行された、建築基準法の改正規定です。
計画しようとする建築物の敷地の両脇を開け、間口の狭い建築物とするなどして計画した建築物の天空率が、各斜線制限に適合する建築物の天空率以上であれば、各斜線制限は適用されず、それにより、斜線制限のために利用できていなかった容積率が有効に使えるようになり、建築物をより高層化しやすくなりました。
(イメージ図)
道路がそれほど広くなく、旧いビルが建ち並ぶ街並みにおいてよく見られる、斜めにカットしたような、滑り台のような壁の形状の建物が隙間なく建ち並んでいるのは、斜線制限の回避策として設計されたものです。
より高層化が進み公開空地も多くなってきて、人々が集いやすくなってきた、いまとなっては少し違和感もおぼえるようになりました。
天空率で敷地を有効活用することにより、ビルだけでなく住宅設計のデザインがより美観と居住や仕事をしていく上でのの快適性を向上させるようになってきましたし、容積率をより多く消化できることにより、土地・建物としての評価額をより高くさせることができる可能性を向上させたのは、この天空率のおかげでしょう。
知り合いの建築士に言わせると、天空率を使用した建築物の設計は容積率の確保と共に如何に美観をアップさせるかといったなど建築デザインの可能性が広がったという点で楽しいそうです。
ちなみに…
先ほどのとおり、天空率を使用して建築した建物は建築計画概要書にその旨を記載(※)することになっていますので、既存建物が斜線制限の適用を受けているにも関わらず、天空率の使用の旨を記載していなければ、違法建築物の可能性は高いかもしれません。
(※)建築物の高さ等の欄に、建築基準法第56条第7項の規定による特例の適用の有無欄があり、適用があるときは特例の区分にもチェックされています。
天空率が使用されたと考えられる建築物については、必ず建築計画概要書を取得して記載の有無を確認しましょう。
また、これに限らず、当事務所では、鑑定評価において建築物の遵法性に関する確認に関するご相談なども承っておりますので、何なりとご相談いただければ幸いです。