令和4年地価公示発表

~標準地の不動産鑑定評価書~

3月22日、令和4年地価公示が発表されました。

【全国の状況】

 国土交通省の発表によると、全国全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。三大都市圏は全用途平均・住宅地は東京圏、大阪圏、名古屋圏のいずれも2年ぶりに上昇に転じ、商業地は東京圏、名古屋圏は上昇に、大阪圏は横ばいに転じました。地方圏は全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。

 景況感の改善を背景に、住宅地では、低金利環境の継続、住宅取得支援施策等による下支えの効果もあり、住宅需要は回復し、地価は上昇に転じています。商業地では、都心近郊部において、店舗やマンション用地に対する需要が高まり、上昇に転じた地点が多く見られます。新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和される中で、全体的に昨年からは回復傾向が見られます。

【埼玉県の状況】

・住宅地

 昨年の下落から上昇に転じ、平均変動率は+0.5%となりました。コロナ禍における住宅市場の停滞から市場が回復、約7割の地点が上昇又は横ばいとなりました。上昇率上位10地点中さいたま市が9地点を占め、都心に近い浦和駅、川口駅、浦和美園駅、武蔵浦和駅の徒歩圏内で利便性の高い地点の上昇が目立っています。

・商業地

 昨年の下落から上昇に転じ、平均変動率は+0.2%となりました。東京近接市及びさいたま市で商業地需要が増加し、約7割の地点が上昇又は横ばいとなりました。大宮駅、川口駅、浦和駅周辺のオフィスやマンション需要が高まる地点で上昇率が高くなりました。

・工業地

 平均変動率は+2.4%と9年連続のプラスとなりました。コロナ禍におけるネット通販需要に支えられ、昨年より上昇幅が拡大しました。川口市や三郷市、戸田市など、都心に近く、首都高、外環道、常磐道へのアクセスが良い地点の上昇率が高くなりました。

公示価格はどのように決められているのでしょうか?

 1地点について2人以上の不動産鑑定士が各々別々に現地を調査し、最新の取引事例やその土地からの収益の見通しなどを分析して評価を行います。さらに、地点間や地域間のバランスなどを検討し、国土交通省の土地鑑定委員会が公示価格(1月1日時点の標準地の1㎡あたりの正常な価格)を決定しています。
 建物の古さの違いや建築費用の違いといったいろいろな特徴が反映された価格は、それぞれの比較がとても複雑で難しくなります。したがって、土地の本来の価値を示すため、建物が建っている現在の土地ではなく、更地としての評価をします。

標準地の不動産鑑定評価書について

 地価公示価格は国土交通省のホームページ「標準地・基準地検索システム」で閲覧できます。こちらでは地価公示価格だけでなく鑑定評価書も閲覧することができます。

標準地・基準地検索システム~国土交通省地価公示・都道府県地価調査~ <検索地域選択(都道府県)> (mlit.go.jp)

 ①都道府県を選択

 ②市区町村を選択

 ③地価公示、調査年(最終調査年)、用途区分(住宅地等)にチェックを入れ、検索ボタンを押す

 ④公示一覧が表示されるので、調べたい標準地の「詳細を開く」をクリック

 ⑤一番下の鑑定評価書の「詳細表示」をクリック

 ⑥2名の鑑定士が作成したそれぞれの鑑定評価書が表示される。  

・1ページ目

はじめに不動産鑑定士名、鑑定評価額、単価、価格時点等が記載されています。

2-(1)標準地…標準地(対象不動産)についての詳細

2-(2)近隣地域…標準地の属する地域の標準的な画地について

2-(3)最有効使用の判定その土地の効用が最高度に発揮できる使用方法

2-(5)鑑定評価の手法の適用…各手法によって求められた価格

2-(7)試算価格の調整・検証及び鑑定評価額の決定の理由…どのように評価額を決定したか

・2ページ目

比準価格をどのように求めたかが記載されています。

比準価格は「取引事例比較法」という手法を用いて求められます。

取引事例比較法

 取引事例比較法とは、多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、対象不動産の試算価格を求める手法であり、これにより求められた試算価格を「比準価格」という。

3(1)

 ・各取引事例のデータ(個人情報保護の為、全ては記載されていません。)

 ・各取引事例の査定価格を求める為の計算に用いた補正率、格差率等

   ①各取引事例が存する地域の標準的な画地の価格時点の価格を求める。

    取引価格×事情補正×時点修正×建付減価×標準化補正=推定価格

   ②各取引事例が存する地域の標準的な画地と標準地を比較して標準価格を求める。
    推定価格×地域要因の比較=標準価格

   ③標準価格×個別的要因の比較=査定価格
 ・補正率、格差率等の内訳(地価の変動率、事例地の前面道路、最寄駅からの距離、ガス、水道等、地形、方位、用途地域など)

・4、5ページ目

収益価格をどのように求めたかについて記載されています。

収益価格は「収益還元法」という手法を用いて求められます。

収益還元法

 収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法であり、これにより求められた試算価格を「収益価格」という。なお、地価公示では標準地に最有効使用の建物を想定し、その想定された不動産から得られる総収益から総費用を控除して全体の不動産の純収益を試算し、さらに、当該不動産のうち建物に帰属する純収益を控除して土地に帰属する純収益を求め、当該土地に帰属する純収益を還元利回りで還元して試算価格を求める方式(土地残余法)を採用している。

(3)-2想定する最有効使用の建物と土地について

(標準地に賃貸用住宅を建設することを想定)

(3)-3想定する建物から得られる総収益

(3)-4…想定建物の賃料等の算出根拠

(3)-5…修繕費や維持管理費等の総費用

(3)-8…純収益の算出

総収益から総費用を引いて求めた土地建物の純収益から建物の純収益を引いて土地の純収益を算出する。土地の純収益を還元利回りで還元して収益価格を求める。

さいごに

 令和4年地価公示の概況と標準地の鑑定評価書について、簡単に紹介させていただきました。地価公示は、土地の適正な価格がどれくらいか客観的な目安として活用されています。その土地の形状、周辺の状況、駅までの距離やガス、水道、下水道の整備状況、前面道路の状況などが示され、そういう条件の土地はいくらかということがわかります。お住まいの地域や興味のある土地と同じような地域の標準地の価格がどのように求められているのかご覧になってみてはいかがでしょうか。