不動産鑑定における市場性減価・市場性修正とは

不動産鑑定評価書や、不動産査定書に「市場性減価」、「市場性修正」、「流動性比率」などの減価項目が記載されていることがあります。これはどのような場合に適用されるのでしょうか。

 

市場性減価・市場性修正の具体例

不動産鑑定評価では、付近の環境と適合していない物件や、土地上に収益性の劣る建物が所在している物件等、耐用年数による減価や観察減価では考慮しきれなかった減価要因がある場合に適用するとされています。

市場性修正が適用される物件の具体例として、『競売不動産評価マニュアル第3版 別冊 判例タイムス30号(東京都競売不動産評価事務研究会編)には、以下の項目が挙げられています。

①老朽化した建物で空室が多い物件や、買受人に対抗出来る低賃料の賃借権者がいる物件。
②持分の取得となる物件
③底地
④借地権付建物
⑤個別格差(無道路地、規模過小、再建築不可、極端な不整形地等)の大きい場合
⑥特殊用途に供された環境や時宜にそぐわない複合不動産の市場性の減退(住宅街の高級料亭、リゾートホテル等)
⑦土壌汚染地又は土壌汚染の疑いがある土地

また、

  • 事故物件
  • 嫌悪施設の近くの物件
  • 早期処分が必要な物件

などについても市場性減価が適用されます。

 

市場性減価・市場性修正が適用されないケース

但し、上記②③④については、完全所有権に復帰することにより市場性の減退要因が解消されるため市場性減価・市場性修正を行わないこととなりますのでご留意ください。

②持分を取得する者が残りの持分所有者である場合
③土地所有者が借地権を買い取る場合
④借地権者が底地を買い取る場合

 

相続税申告のための評価における市場性減価・市場性修正

相続税申告のための評価では、財産評価基本通達に基づき定型的に評価が行われますが、ここでも市場性の劣る土地については、「利用価値が著しく低下している宅地の評価」として10%の減価可能な場合があります。

 

具体的には国税庁タックスアンサー№4617に以下の記載があります。

1 道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
2 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
3 震動の甚だしい宅地
4 1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

また、10%よりも大幅に市場性減価が必要な物件については、不動産鑑定評価による相続税申告も考えられます。

 

減価率

市場性減価・市場性修正の減価率については、個々の物件の状況に応じて判断されるため、定形的な数値を示すのは難しいのですが、上記「利用価値が著しく低下している宅地の評価」の-10%や、公売不動産の再公売における減価率、競売不動産評価における市場性減価率・競売市場性修正率等が参考となります。競売不動産評価の市場性修正については、地域や物件の種類によって異なりますが、現在入札期間中の物件については不動産競売物件情報サイトBITに、評価書が公開されていますので、参考になるかと思います。

 

まとめ

市場性修正・市場性減価を適用するか否かの判断、減価率をどのくらいにするかの判断は難しく、争いの相手方や裁判所、税務署等へ主張する場合には個々の不動産に応じて減価率決定理由の説明が必要となります。市場性減価の適用に悩まれた場合、または相手から提示された市場性減価に疑問がある場合などには不動産鑑定士にご相談下さい。