元号が令和に変わり早1年10ヶ月が過ぎました。昨年は年明け早々、新型コロナウイルス感染症が確認され、2月には初の死者が出ました。1年たった現在でも首都圏をはじめとする感染拡大には歯止めがかからず、2度目の「緊急事態宣言」が解除されたものの、飲食店の時短営業やテレワーク実施の推進は引き続き継続しています。

そんな中、土地の価格はこの1年でどう変化したのでしょうか。

3月23日地価公示が発表されました。2月のブログに載せた公的評価の一つです。

１、全国の状況

　国土交通省の発表によると、全国の全用途平均は平成27年以来6年ぶりに下落に転じた。三大都市圏・地方圏においても、地方四市（札幌市、仙台市、広島市及び福岡市）では上昇を継続したが上昇率が縮小し、地方四市を除くその他の地域では全用途平均が下落に転じました。
　令和3年の地価公示の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響等により、全体的に弱含みとなっており、昨年からの変化は、商業地が住宅地より大きく、三大都市圏が地方圏より大きい傾向にあります。 　価格順位全国1位の東京都銀座地区の商業地、公示地 中央５－２２は外国人観光客関連の需要がほぼ消失し、国内客も大幅に減少したことから、飲食・物販店舗等の収益性が低下し、地価は下落に転じました。

２、埼玉県の状況

• 住宅地

　市町村別平均変動率が57市町で下落し、県全体では＋1.0％から-0.6％と下落に転じました。一方、平均変動率が上昇したのは川口市、戸田市、蕨市の3市のみで、中でも川口市の堅調ぶりが際立っています。
　さいたま市では横ばいの浦和区を除く9区で下落しました。

• 商業地

　商業地の上昇地点はわずか7地点にとどまり、県全体では前年の＋2.0％から-0.9％と住宅地同様下落に転じました。
　県内商業地の最高価格地点である公示地大宮５－１（さいたま市大宮区桜木町）は30年連続の1位となりましたが、変動率は横ばいでした。また、大宮５－５が前年+6.7％から-5.6％と県内下落率1位となり、県内屈指の歓楽街であるが、新型コロナウイルス感染症による客数の減少、テナント撤退等で大きな下落となったと思われます。

• 工業地

　工業地は、外環道や圏央道近くでは上昇傾向が続いています。継続調査の全44地点のうち34地点が上昇、5地点が横ばい、令和2年にはなかった下落地点が5地点となり、県全体では前年の＋3.0％から+1.6％と8年連続のプラスとなったものの、上昇率は縮小しました。
　三郷市、越谷市、川口市、春日部市内など、首都高や外環道、国道16号近くの交通利便性の高い地点など、コロナ禍のネット通販需要に伴う物流倉庫適地では引き続き上昇率が高かったものの、昨年より上昇率は縮小しました。

３、新型コロナウイルス感染症の地価への影響

　平成２年の地価公示まで全国平均で地価上昇を続けており、その背景には、緩やかな景気回復傾向とインバウンド需要がありました。コロナ禍で世界的な景気後退、人・物の流通の減少、緊急事態宣言の発動等があり、飲食業・観光業を中心に経済活動は大幅に停滞しています。
　一方で、リモートワークなど在宅勤務が増えたことによって、通勤アクセスより住み心地を重視し、都心に比べ割安感のある郊外部の住宅地に住宅をシフトする動きも出てきているようです。
　今までには無かった様々な要因が出てくる中、新型コロナウイルス感染症による地価への影響はまだ不透明な状況ですが、今後の地価動向について注視していきたいと思います。

４、土地の価格

　地価公示価格は国土交通省のホームページで閲覧できますが、土地の価格形成要因は様々です。
　売買の参考、相続が発生し遺産分割が必要、離婚による財産分与など所有されている土地の価格がどの程度なのかお知りになりたいときは、不動産鑑定士にご相談ください。

５、上尾市のイオンモール効果

　公示地 上尾－２５「上尾市栄町4-9」は埼玉県内住宅地の上昇率第２位となりました。これは昨年の12月4日にオープンしたイオンモール上尾の効果と思われます。

６、さいごに

　東京オリンピック、パラリンピックの開催も確定しておらず、開催されても海外からの観客受け入れは断念するという厳しい見通しの現状では、経済の回復も時間がかかりそうです。
　新型コロナウイルスのワクチン接種が始まって、1ヶ月余り（2/17～）が経ちました。国立病院などに所属する医療従事者を対象に先行接種が始まり、高齢者、基礎疾患を有する方等の順に行われていくそうです。

春はそこまでやってきています。少しずつでも平穏な日常が戻ってくること願っています。

↓　国土交通省　令和3年地価公示の概要　↓　

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000432.html