過去の土地利用の調べ方

 不動産鑑定評価を行う際、過去の土地利用について調べることがあります。紙面上の調査が主で、限られた範囲での調査となりますが、評価の際の参考情報となります。調査には古い住宅地図や国土地理院の空中写真などを利用します。今回は折角ですので専門家でなくても簡単にできる過去の土地利用の調べ方についてお伝えしたいと思います。「この辺り昔はなにが建ってたんだろう」というちょっとした郷土研究や、「夏の自由研究で簡単にできるテーマないかな…」といった学生さんのお悩みなどにどうぞご利用ください。

住宅地図

 住宅地図とは建物名称や企業名、居住者名が記載された地図のことです。Googleマップなどと異なり個人宅の居住者名も表示されているため、普通の住宅なのか、店舗なのか、工場なのか、といった情報がわかりやすいのが特徴です。

 住宅地図は書店で販売されているほか、図書館にも所蔵されています。また場所がはっきりとわかっている場合はインターネットやコンビニのマルチコピー機から有料で取得できます。これらのデジタルサービスは離れた地域の最新の住宅地図を簡単に手に入れることができるのですが、残念ながら過去地図は(一般的には)取得できません。過去の住宅地図が見たい場合はやはり図書館に行くのが一番簡単です。お近くの図書館の蔵書検索をしてみてください。例えば弊社の所在する上尾市の図書館ですと、上尾市版は1976年から所蔵しており、周辺市町村のものも複数年に渡り所蔵しています。もしお探しの地図が見つからない場合は都道府県図書館の横断検索も利用してみてください。他市の図書館の分もまとめて検索できます。市町村名の変更にもご注意ください。

埼玉県立図書館「埼玉県内図書館横断検索」

https://www.lib.pref.saitama.jp/calil/index.html

 目当ての過去地図までたどり着けましたら、次は紙面から目的の場所を探します。「地図なんだから簡単に見つかるだろう」と思われるかもしれませんが、平成の大合併による名称変更、道路・線路の新設による街区形状の変化など、思うように見つけられないこともあります。そんなときは神社やお寺、学校を探しましょう。絶対ではないのですがこれらは所在が変わりにくいため良い目印になりますよ。

 もし図書館で地図をコピーしたい場合は図書館員さんにご相談ください。図書館の複写サービスには制限がありますのでよくご確認ください。

空中写真(航空写真)

 住宅地図のほかにインターネット上の空中写真で過去の状況を確認することもあります。写真ですので建物名称などは確認できないのですが、現在の地図と重ね合わせて探せるため検索が容易なのが特徴です。

国土地理院「地理院地図」「地図・空中写真閲覧サービス」

https://maps.gsi.go.jp/

 地理院地図では地図と空中写真を重ねて見ることができます。所在も検索バーに住所を入力すればよいだけで、紙の地図から探すのに比べ非常にお手軽です。1974年頃から撮影されたカラーの空中写真は、変化の多い地域ですと順次再撮影もされており、時系列表示の機能を使うと周囲を含めた経過を追っていくことができます。神社やお寺、学校の位置が変わらない、というのも実感していただけると思います。

 以上、簡単にではありましたが過去の土地利用の調べ方をご紹介しました。お役に立ちましたら幸いです。

ちなみに

 蛇足ではありますが、「昔ここは墓地だったから幽霊がでる」というありがちな七不思議が存在した我が母校について調べてみました。1960年代の空中写真でも学校施設のようで前歴がわかりませんでしたが、学校HPを確認したところ「陸軍研究施設の跡地を利用」となっており、あっさり昔のことが判明しました。それはそれで別の七不思議が生まれそうではありますが、信頼性の高い団体であれば、公式HPも参考になるかもしれません。