所有不動産記録証明制度

2026年2月 所有不動産記録証明制度がスタート

1. はじめに

近年、日本では「所有者不明土地問題」が深刻化しています。人口減少や都市部への人口集中に伴い、地方の土地が相続未登記のまま放置され、公共事業の遅延、災害復旧の妨げ、土地利用の停滞など多くの社会的損失を生んでいます。これらの課題に対応するため、政府は一連の法改正と制度整備を進めており、その中心的役割を果たすのが所有不動産記録証明制度です。

2. 所有不動産記録証明制度とは

2.1 制度の目的

所有不動産記録証明制度は、個人が全国で所有する不動産を一括して把握できるようにすることで、相続手続きの円滑化、所有者不明土地の発生抑制、行政手続きの効率化を図ることを目的としています。

2.2 取得方法

請求は法務局で行うことができ、オンラインでも可。なお、所有不動産記録証明書は、請求書に記載された検索条件の氏名・住所ごとに作成されます。検索条件の氏名・住所と不動産の登記簿上の氏名・住所が一致していない不動産については抽出されないため注意が必要です。

2.3 請求できる人

・不動産の所有者(所有権の登記名義人)本人  

・不動産の所有権の登記名義人の相続人

3. 関連制度との関係性

3.1 相続登記義務化との連動

2024年4月から相続登記が義務化され、相続などで不動産を取得した相続人は不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。また、複数の相続人による遺産分割協議を経て取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた登記をしなければなりません。正当な理由なく登記を行わない場合は、10万円以下の過料の適用対象です。 2024年4月1日より前に相続した不動産であっても、相続登記の義務化の対象となり、2027年3月31日までに相続登記をする必要があるので注意が必要です。

しかし、相続人が被相続人の不動産を把握できない場合、義務化は実効性を欠きます。所有不動産記録証明制度は、被相続人の不動産を全国レベルで一覧化する手段として、相続登記義務化の実効性を支える基盤制度です。

3.2 相続土地国庫帰属制度との補完関係

相続した土地を管理できない場合、一定の条件下で国に引き取ってもらう制度が2023年に開始されました。この制度を利用するには、相続した土地の全体像を把握する必要があるため、所有不動産記録証明書は土地の「棚卸し」を行う上で有効なツールとなります。

3.3 相続人申告登記との関係

相続登記義務化に合わせて導入された簡易制度で、相続人であることを申告するだけで義務を果たしたことになります。申告対象となる不動産を漏れなく把握するためにも、所有不動産記録証明制度が役立ちます。

3.4 住所変更登記義務化との連携

2026年4月1日から、所有者の住所変更を2年以内に登記する義務が新設されます。また、住所等の変更登記の義務化と併せて「スマート変更登記」制度も始まります。 事前に不動産の所有者が法務局に生年月日などの検索用情報の申出をしておくことで、引越し等で住所変更するたびに変更登記の申請をしなくても、法務局の登記官が職権で住所などの変更登記を行う制度です。住所情報が最新化されることで、所有不動産記録証明書の精度が向上し、所有者不明土地の発生抑制に寄与します。

3.5 デジタル化政策との整合性

登記情報のオンライン化・デジタル化を進める政府方針の中で、所有不動産記録証明制度はその象徴的な成果です。オンラインで全国の不動産情報を取得できる仕組みは、行政の効率化と国民の利便性向上に直結します。

4. 制度全体の意義

4.1 所有者不明土地問題の解消

複数の制度が連動することで、相続未登記の減少、所有者情報の最新化、不動産の把握の容易化が進み、所有者不明土地の発生を抑制する効果が期待されます。

4.2 相続手続きの負担軽減

相続人が被相続人の不動産を探し回る必要がなくなり、手続きの迅速化と負担軽減につながります。

4.3 行政コストの削減

公共事業や土地利用計画における所有者探索の負担が軽減され、行政コストの削減が見込まれます。

5. おわりに

所有不動産記録証明制度は、相続登記義務化や国庫帰属制度などと密接に連動し、所有者不明土地問題の解決に向けた重要な基盤となる制度です。登記漏れがある場合は証明書に反映されない点、高齢者やデジタル弱者への対応等の課題はありますが、今後、制度の運用改善やデジタル化の進展により、効率的で透明性の高い不動産管理が実現することが期待されます。

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